執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
株式会社の役員には任期があります。任期が満了すると役員は退任しますので、新たに役員を選任する必要があります。
任期の満了以外にも役員の変更が必要になる場合があります。
ここでは、株式会社の役員変更登記について説明します。
株式会社の役員には、取締役、代表取締役、監査役などがあります。
役員の変更登記が必要な場合には、
⑴ 役員の任期が満了した場合
⑵ 役員が死亡、辞任した場合
⑶ 役員を増員した場合
などがあります。
又、住所が登記されている役員(代表取締役など)の住所が変更した時にも住所の変更登記が必要です。(忘れやすいです)
会社によっては、役員の顔ぶれにあまり変更がないことも多いかと思いますが、たとえ役員の顔ぶれに変更がない場合でも、役員の任期が到来した場合には、役員の改選・変更登記が必要となります。
役員変更登記は、役員の変更があったときから2週間以内に申請することとなっています。
役員の任期が到来し、役員改選をしなければならないにもかかわらず、そのまま放置していると、みなし解散、過料の対象となりますので、注意が必要です。
株式会社の役員の任期は、会社の定款(会社運営の基本ルール)に定められています。
取締役の法定任期は2年、監査役の法定任期は4年ですが、一定の条件を満たしている場合には、定款に定めることにより、それぞれ最長10年まで任期を伸長することができます。
つまり各会社によって役員の任期は異なります。定款で任期を10年に伸長している会社も多いです。
また、他の取締役の任期途中に増員された取締役ついては他の取締役の任期と同一とする会社、退任した取締役の補欠として選任された取締役については前任の取締役の任期と同一とする会社、退任した監査役の補欠として選任された監査役については前任の監査役の任期と同一とする会社、も多いです。
現任の役員の任期を確認するためには、現在の役員がいつ就任したのかを登記記録を見て確認し、その会社の定款で役員の任期がどのように定められているかを確認する必要があります。
株式会社の役員が退任する事由により、必要書類は変わります。
1.取締役、監査役の任期満了
取締役や監査役の任期については、前述のとおり、登記記録よび定款の規定を確認します。
「取締役の任期は、選任後〇年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。」などと規定されている場合が多いですが、その場合の退任時期を証する書面は、定款(任期の規定、事業年度を確認)および当該事業年度の定時株主総会議事録となります。
なお、任期が満了しているにもかかわらず後任者が選任されていない場合には、任期満了後も権利義務を承継しているとして退任の登記はすることが出来ません。
後日、後任者が選任された際に、本来の任期が満了した日をもって退任した旨の登記申請をします。
2.取締役、代表取締役、監査役の辞任
辞任により退任する場合には辞任届を会社宛てに提出します。
辞任をすると役員の人数が定款で定められた人数を下回ってしまう場合には、辞任後も権利義務を承継しているとして退任の登記はすることが出来ません。
後日、後任者が選任された際に、本来の辞任日をもって退任した旨の登記申請をします。
辞任届に押印する印鑑は、次のようになります。
①取締役、監査役は認印で可
②法務局に印鑑を届け出ていない代表取締役は認印で可
②法務局に印鑑を届け出ている代表取締役は「法務局届出印」または「個人の実印」(個人の実印の場合には市区町村発行の印鑑証明書も添付する必要があります)
3.取締役、代表取締役、監査役の死亡
取締役、代表取締役、監査役のが死亡した場合には、死亡した人の親族から死亡届または戸籍謄本を会社宛てに提出してもらいます。
株式会社の役員の選任については、次の取り扱いとなります。
1.取締役
株主総会で選任します。
選任された取締役の就任承諾が必要です。
就任承諾書の押印については、次のような取り扱いとなります。
①取締役会を設置している会社
取締役の就任承諾書の押印は認印で構いません。ただし、新任の取締役が就任する場合には、登記申請書に本人確認証明書(住民票の原本、運転免許証などのコピーに原本に相違ない旨の記載をして署名捺印したもの等)を添付しなければなりません。
②取締役会を設置していない会社
新任の取締役の就任承諾書の押印は個人の実印で押印する必要があります。
この場合、登記申請書に個人の印鑑証明書を添付しますので、本人確認証明書の添付は必要ありません。
再任の取締役の就任承諾書は認印で構いません。
2.監査役
株主総会で選任します。
選任された監査役の就任承諾が必要です。
取締役会を設置しているか否かにかかわらず、就任承諾書の押印は認印で構いませんが、新任の監査役が就任する場合には、登記申請書に本人確認証明書(住民票の原本、運転免許証などのコピーに原本に相違ない旨の記載をして署名捺印したもの等)を添付しなければなりません。
3.代表取締役
代表取締役の選定については、会社の機関設計(取締役会を設置しているか取締役会を設置していないか)によって違います。
①取締役会を設置している会社
取締役会で選定します。選定された代表取締役の就任承諾が必要です。
新任の代表取締役の就任承諾書には個人の実印を押印する必要があり、個人の印鑑証明書を添付する必要があります。
取締役会議事録の押印ですが、原則は出席した取締役(監査役が出席していた場合には監査役も含む)全員の個人の実印でする必要がありますし、各取締役の個人の印鑑証明書を添付する必要があります。例外として、前任の代表取締役が「法務局に届け出た印鑑(会社の実印)」で押印している場合には、その他の取締役は認印でも良いことになっています。
②取締役会を設置していない会社
代表取締役の選定方法は、定款の規定により異なります。取締役の互選、株主総会の決議とされている会社が多いです。他に定款に直接定めるとする会社もあります。
取締役の互選の場合には、取締役の過半数の一致によって、代表取締役を選定します。
株主総会の決議の場合には、株主総会で選定します。
代表取締役の就任承諾書は、取締役の互選により選定された場合に必要となりますが、認印による押印で構いません。
尚、取締役の互選書の押印ですが、原則は互選に参加した取締役の個人の実印でする必要がありますし、各取締役の個人の印鑑証明書を添付する必要があります。
例外として、前任の代表取締役が「法務局に届け出た印鑑(会社の実印)」で押印している場合には、その他の取締役は認印でも良いことになっています。
株式会社の役員変更登記の費用は次のとおりです。
1.登録免許税
10,000円(資本金が1億円を超える会社は30,000円)
2.司法書士報酬
20,000円(当方にご依頼いただいた場合)
※ 議事録等を作成した場合には、別途書類作成報酬がかかります。(報酬基準はこちらをご参照ください。)
※ 司法書士報酬は、各司法書士が独自に定めています。
役員変更登記をご依頼いただく場合の費用総額(資本金1億円以下の株式会社。登録免許税・消費税等を含む総額)は、35,000円から45,000円となる場合が多いです。(作成する書類により報酬額がかわります。)
会社法の施行により、役員の任期を最長10年まで伸長することが出来るようになりました。
役員の任期を伸ばすことにより、役員変更手続きに関する手間や費用が抑制される一方で、役員変更を失念してしまうリスクが高まっています。
皆さんの会社の役員の任期は何年でしょうか?現在の役員の皆さんの任期はいつ到来するのでしょうか?
役員の任期がわからない場合には、定款と登記の内容を確認する必要があります。確認してみたがよくわからないという方は、ご相談ください。
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