司法書士田原一暁(兵庫県川西市)登記・相続・遺言はお任せください

執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁

相続登記のご依頼をいただき、手続きを完了したお客様から「不動産業者からDM(ダイレクトメール)がどんどん届くけど一体どういうこと?」とお問い合わせをいただくことがあります。1社からだけではなく複数社(十数通届いたお客様もいらっしゃいました)から届くものですから、お客様も不審に思い、連絡してこられます。

相続登記をしたとたんに「不動産を売りませんか?」などというDMが届くわけですから気持ちの良いものではありません。中には私が不動産業者に情報を漏らしたのでは?と考える方もいらっしゃいますが、それは絶対にありません。

では、どのようなことが起こっているのでしょうか?

1.不動産の登記情報は公開情報

不動産の登記情報は公開情報であり、法務局に行って登記事項証明書を取得すれば誰でも登記情報を得ることができます。

不動産の所有者が誰なのか?どんな権利が設定されているのか?は、高度な個人情報と言えますが、次のような状況を考えてみましょう。

例1 家の向かいにある土地の所有者だと名乗る人物が、その土地を買いませんか?と声をかけてきた。丁度駐車スペースが不足していたので向かいの土地が有れば便利に使えそうだとは思うものの本当にその人物は向かいの土地の所有者なのだろうか?面識の無い人物だし確認が必要だ。

例2 商売をしている知人が「所有する不動産を担保にお金を貸してほしい。」と言ってきた。また、知人は「この不動産には全く担保は設定されておらず1番の抵当権を設定できる。」とも言っている。本当にそうなら担保設定を条件にお金を貸してあげても良いかなとは思うが、本当に担保は設定されていないのだろうか?確認が必要だ。

いずれの場合も自称所有者や知人の言葉を鵜呑みにしては危険ですので、調査、確認をすることが必要です。調査の先は法務局であり、確認すべきは登記情報ということになります。(人の確認も必要です)

このような事情から不動産の登記情報は公開されています。「自分の所有不動産の登記情報は誰にも見られたくないので非公開にしてほしい」と思ったとしても、それは出来ません。

2.不動産登記受付帳

直近に相続登記が申請された不動産は、所有権を取得した相続人が使用していない不動産(いわゆる遊休不動産)である可能性が比較的高いため、不動産業者にとってその不動産情報は、非常に有用であると思われます。とはいえ、すべての不動産について登記情報を確認するというわけにもいきません。

法務局には「不動産登記受付帳」という帳簿があます。登記申請の受付年月日・受付番号・不動産の所在地番・登記の種類など登記申請の概要が一覧表になっています。そして、不動産登記受付帳の「登記の種類」の部分を見ると、その不動産について相続により所有権移転登記がされたことが分かるようになっています。ただし、その不動産の所有者が誰なのか?は記載されていません。

不動産登記受付帳をネット検索すると画像がたくさん出てきます。どんな帳簿かはネットで画像検索をしてみてください。

3.行政機関の保有する情報の公開に関する法律

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」という法律があります。行政の民主的な運営を担保するために「何人も行政機関の保有する情報の公開を請求することができる」とされています。

法務局も行政機関であること、不動産登記受付帳が行政文書であること、そして前述のとおり不動産の登記情報が公開情報であることなどから不動産登記受付帳は、行政文書の開示請求の対象となっており、誰でも開示請求をすることが出来ます。

不動産登記受付帳には、不動産の所在地番は記載されていますが、その不動産の所有者が誰であるかは記載されていません。ですので、公開された不動産登記受付帳から相続登記がされた不動産をピックアップし、登記情報(公開情報)を調べて、その所有者にDMを送るという仕組みになっています。

相続登記がされた不動産とその所有者を調べるためには、①不動産登記受付帳の開示請求 ②不動産登記情報の取得 という2つのステップを踏む必要があるということになります。

まあまあの手間がかかりますので、リストアップすることを業とする事業者も存在するようです。

4.まとめ

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」は、行政の民主的な運営を担保するための法律ですので、前述のように営業資料にするための不動産登記受付帳の利用は法律本来の趣旨からは逸脱しているように個人的には思います。

相続登記をしたとたんにDMがたくさん届くのは気持ちの良いものではありませんが、現状ではそれを完全に防ぐことは出来ません。 

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