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住所や氏名の変更登記

執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁

所有権等の登記名義人の住所や氏名(個人の場合)、商号・名称や本店・主たる事務所(会社法人の場合)に変更があった場合には、その変更登記の申請が必要です。

申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。

管轄法務局は、法務局のホームページで確認できます。

基本的には難しい登記申請ではありませんが、大切な登記申請です。

所有権移転登記や抵当権設定登記等の登記申請(ほぼ全ての登記申請)をする場合には、登記名義人の「現在の住所氏名」と「登記記録上の住所氏名」が一致している必要があります。

他の登記申請の前提として住所氏名等の変更登記が必要であることを見落してしまうと、全ての登記申請がダメになってしまいます。

ですので、司法書士はこの住所氏名等の変更登記に大変注意を払います。

目次

どんな場合に必要な登記申請なのか?

所有権移転登記を申請する時には、登記権利者(新たに登記名義人となる人や会社法人)の住民票等の住所を証する書面(住所証明情報ともいいます)を添付し、住民票等や商業登記記録のとおりの住所氏名・商号本店で新所有者としての登記がされます。

不動産について所有権の登記がされた後に次のような事情があった場合には、その変更の登記を申請する必要があります。

 

1.引っ越しをして住民票上の住所に変更があった

2.引っ越しはしていないが住居表示実施により住所の呼び方が変わった

※ 住居表示実施の例 川西市●●字●●100番地 → 川西市●●1丁目1番1号 と呼び方が変更される

3.結婚・離婚をして氏に変更があった

4.養子縁組・離縁をして氏に変更があった

5.会社の本店を移転した

6.会社の商号を変更した

 

以上のような事情があったとしても、不動産登記記録に記載されている住所や氏名は自動的には変更されません。その旨の登記申請が必要です。

必要な書類

1.個人の場合

⑴住所に変更があったとき(転居)

住民票や戸籍附票

※ 登記記録上の住所から現在の住所までの全ての住所変更の履歴を全て証明する必要があります。

複数回転居をしている場合には、現在の住所地にて取得した住民票のみでは証明することが出来ないことがあります。

必要に応じて前住所地の市区町村にて住民票の除票(閉鎖された住民票)を取得したり、本籍地の市区町村にて戸籍附票(戸籍の付属書類・本籍地の市区町村で住所の履歴が記録されています)を取得したりする必要があります。

※ 「住民票の除票」や「閉鎖された戸籍附票」(戸籍附票は、転籍や戸籍の改製で閉鎖されます)の保存期間が5年から150年に伸長されましたが、既に閉鎖されたものは取得できないことがあります。(市区町村によって保存期間の取扱いが違います)

※ 実務上、住所の履歴が証明できないことは多々あります。その場合には、住民票や戸籍附票等を可能な限り取得した上で、上申書、印鑑証明書、権利書(登記済証)、登記識別情報通知、現在の住所の記載されている固定資産税の納税通知書などを添付することとなります。

 

⑵住所に変更があったとき(住居表示の実施)

住居表示実施証明書

※ 住居表示実施により住所の呼称に変更があった場合には、市区町村で「住居表示実施証明書」を取得します。

※ 住居表示実施証明書の発行手数料は無料です。

 

⑶氏名に変更があったとき

戸籍謄抄本(氏名の変更があったことが記載されているもの)+ 住民票(本籍地の記載が必要)または戸籍附票

※ 戸籍謄抄本により氏名の変更は証明できますが、それに加えて住民票(本籍地記載のもの)または戸籍附票が必要です。戸籍には住所の記載がなく、登記記録には本籍の記載がないため、戸籍に記載されている人と登記記録されている人が同一人物であることを証明しなければなりません。

 

2.会社法人の場合

履歴事項証明書など本店商号の変更を証明できるもの

※ 会社法人等番号を登記申請書に記載することにより添付を省略できますが、正しく登記申請をするためには、商号・本店の変更の履歴を正確に把握する必要があります。

尚、商業法人の登記記録がコンピュータ化される前の変更は、会社法人等番号の提供により添付省略できませんので、閉鎖登記簿謄抄本の原本を準備する必要があります。

登記事項

1.住所変更の場合

住所変更の日付および変更後の住所

例 令和3年7月17日住所移転 変更後の事項 住所 兵庫県川西市小戸二丁目6番11号

※ 複数回変更している場合には、最終の住所移転日と住所のみ記載されます。

 

2.氏名変更の場合

氏名変更の日付および変更後の氏名

例 令和3年7月17日氏名変更 変更後の事項 氏名 田原一暁

※ 結婚・離婚・養子縁組・離縁にかかわらず全て「氏名変更」と記載します。

※ 複数回変更している場合には、最終の氏名変更日と氏名のみ記載されます。

 

3.本店移転の場合

本店移転の日付および変更後の本店

例 令和3年7月17日本店移転 変更後の事項 本店 兵庫県川西市小戸二丁目6番11号

※ 複数回移転している場合には、最終の本店移転日と本店のみ記載されます。

 

4.商号変更の場合

商号変更の日付および変更後の商号

例 令和3年7月17日商号変更 変更後の事項 商号 株式会社川西合同商事

※ 複数回変更している場合には、最終の商号変更日と商号のみ記載されます。

 

5.複数の事項に変更がある場合(このような場合には一括して申請します)

例 離婚に伴い財産分与を行う場合に、一方の当事者が復氏しており、尚且つ転居している場合

令和3年5月1日住所移転、令和3年7月17日氏名変更

変更後の事項 住所 兵庫県川西市小戸二丁目6番11号 氏名 田原一暁

住所氏名変更登記の費用

1.登録免許税

住所や氏名の変更登記の登録免許税は、不動産の1個につき1,000円です。

※ 住所と氏名の変更登記を一緒に申請する場合にも登録免許税は不動産1個につき1,000円です。

※ 住居表示実施による住所の変更は、住居表示実施証明書を添付すれば非課税です。

※ マンションの場合には、専有部分の建物を1個、敷地権の目的たる土地の数を1個と数えます。

戸建住宅の場合にも、マンションの場合にも外観だけでは敷地の数が分からないことがあります。

また、進入路やゴミステーション(近隣の人と共有の場合も多い)が存在する場合もありますので注意が必要です。

 

2.司法書士報酬

現在、司法書士報酬は自由化されており、各司法書士が独自に報酬基準を設けることになっています。

関連ページ:司法書士報酬の相場について

当方にご依頼いただいた場合の住所や氏名の変更登記のですが、土地1筆、建物1棟の場合は、費と報酬等含めて15,000円程度となります。

マンション(敷地権の目的たる土地の個数が1個)の場合は、実費と報酬等を含めて13,000円程度となります。

不動産の個数が多い場合など、事案によって費用は変わります。まずは事案の内容を確認させていただきますので、ご納得の上、ご依頼いただきますようお願い申し上げます。

なお、報酬基準はこちらをご参照ください。

住所氏名変更登記の重要性

住所や氏名の変更登記は、それ単体でご依頼いただくことは比較的少なく、売買による所有権移転登記贈与による所有権移転登記財産分与による所有権移転登記抵当権抹消登記抵当権設定登記などの際に併せてご依頼いただくことが多いです。

いずれの登記を申請する場合にも登記記録上の住所と申請時の住民票上の住所が一致している必要があります。

住所や氏名の変更登記を申請し忘れると、これらの登記申請も併せて補正を求められますが、住所氏名の変更登記の受付番号が取れませんので、登記申請の取り下げを余儀なくされます。

売買による所有権移転登記や抵当権設定登記においては登記の申請時には資金(売買代金や融資金)が動いていますので、特に注意が必要です。

まとめ

単純に1回引っ越しをしていて、現在の住民票をとれば住所の変遷の証明が出来る場合には、難しい登記ではありません。

転居を何度もしている、住所だけではなく氏名も変更している、証明できる公的な書類(除票や戸籍附票)が保存期間の経過により取得できない・・・等の事情がある場合には難易度が上がります。

ここでは触れていませんが、古い住民票を使用して所有権移転登記を申請した場合等には、登記されている住所がそもそも間違っていた(錯誤(サクゴ)といいます)ために更正登記(そもそも間違っていたものを正しく直す登記)を申請する場合もあります。さらに錯誤と変更が複合する場合もあります。

住所氏名等の変更登記のことを司法書士の間では略して「名変(めいへん)」と呼んでいます。「たかが名変、されど名変」という言葉もあるほど奥が深い登記です。

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