執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
離婚にともなう財産分与の一環として、不動産の名義を変更することがあります。
一方の当事者が単独で所有している不動産の場合には所有権移転登記を申請します。
夫婦共有の不動産の場合には持分移転登記を申請します。
財産分与とは、離婚をした一方の当事者が、相手方に対して財産の分与を請求することが出来る制度です。
財産分与請求の性質としては
⑴ 夫婦であった期間に形成された財産の清算(潜在的持分の清算)
⑵ 離婚後の生活保障
⑶ 離婚の原因を作ったことについての賠償
があるとされていますが、基本的には⑴の夫婦財産の清算が主だったものとされています。(法務省のホームページはこちら)
不動産の財産分与の効力発生日は、次のような取り扱いとなります。
⑴ 離婚成立前に協議が整い、その後に離婚が成立した場合には、離婚成立日に所有権が移転する。
⑵ 離婚成立後に財産分与の協議が成立した場合には、協議成立日に所有権が移転する。
正式に離婚が成立する前には不動産の所有権移転登記を申請することはできません。
家庭裁判所に調停を申し立てることが出来る期間は、離婚成立後2年以内とされています。(裁判所のホームはこちら)
両当事者の合意があれば離婚成立後2年経過後も財産分与は可能です。
離婚にともなう財産分与による所有権移転登記の必要書類等は、協議離婚の場合と、裁判上の離婚(調停・審判)の場合とで異なります。
1.協議離婚の場合
⑴ 財産分与協議書 又は 登記原因証明情報(司法書士が作成します)
⑵ 不動産の登記済証 又は 登記識別情報通知
関連ページ:登記識別情報通知とは何ですか?
⑶ 財産分与により不動産を渡す人の印鑑証明書(発行後3か月以内)
関連ページ:不動産登記に使う印鑑証明書の期限は?
⑷ 財産分与により不動産を渡す人の実印
⑸ 財産分与により新たに所有者になる人の住民票
⑹ 財産分与により新たに所有者になる人の印鑑(認印可)
⑺ 不動産の固定資産税評価証明書 又は 課税明細書(登記費用の見積もりについてはこちら)
※ 財産を渡す人の住所氏名に変更がある場合には、住所や氏名の変更登記が必要です。その場合には住民票や戸籍抄本が必要です。
関連ページ:住所や氏名の変更登記
2.裁判上の離婚の場合
⑴ 調停調書 又は 審判書
⑵ 財産分与により新たに所有者になる人の住民票
⑶ 財産分与により新たに所有者になる人の印鑑(認印可)
⑷ 不動産の固定資産税評価証明書 又は 課税明細書(登記費用の見積もりについてはこちら)
※ 調停調書等に「相手方は、申立人に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする。」という表現がされている場合には、新たに所有者となる人が単独で登記申請をすることが可能です。そのような表現が無い場合には、協議離婚の場合と同じ書類を準備して、共同して登記申請をする必要があります。
※ 財産を渡す人の住所氏名に変更がある場合には、住所や氏名の変更登記が必要です。調停調書等により単独申請が可能な場合には、新たに所有者となる人が代位により相手方の住所や氏名の変更登記の申請をすることが可能です。代位による住所や氏名の変更登記が可能な場合には、相手方の住民票や戸籍抄本を取得することが可能です。
財産分与は夫婦財産の清算としての性質をメインに有しているため、
⑴ 不動産取得税は原則非課税とされている(不動産取得税に関する兵庫県のホームページ)
財産分与は「夫婦財産の清算」という意味合いでなされるため、新たに不動産を取得したとは考えないためです。
⑵ 財産分与により財産を受けた人には原則贈与税は課税されません。(財産分与により財産を取得した場合についての国税庁のホームページ)
⑶ 財産分与をする人(渡す方の人)には譲渡所得税が課税される場合がある。
とされています。(財産分与により土地建物を渡した人についての国税庁のホームページ)
住宅ローンがある場合には、債権者である銀行等に連絡をし、住宅ローンの返済につき協議をする必要があります。
具体的には、財産を分与する人の住宅ローンの残債務を財産を受ける人が引き受ける(債務引受)ことになる場合が多いです。
ただし、債務を引き受ける場合には、新たにローンを借り入れる時と同様に審査があると思われますので、必ず債務引き受けが可能とは限りません。
債務引き受けがあった場合には抵当権の債務者を変更する登記を申請します。
財産分与協議において住宅ローンの取り扱いについての合意をしても、債権者はその合意内容を受諾する義務はありません。
財産分与につき争いがあり、解決に至っていない場合には、お引き受けすることは出来ません。
家庭裁判所に調停申し立てをする必要があります。(財産分与調停に関する裁判所のホームページ)
調停成立または審判がなされた場合には、前述のとおりの登記申請のお手伝いが可能です。
離婚当事者の間で、財産分与について争いが無い場合には、財産分与協議書の作成等、お手伝いが可能です。
財産分与による所有権移転登記の費用は、次のとおりです。
1.登録免許税
財産分与する不動産の固定資産税評価額の2%
計算例 評価額1000万円の場合 1000万円×2%=20万円
※ 持分移転の場合には、固定資産税評価額に持分割合を掛けて計算します
2.司法書士にご依頼いただく場合には、司法書士報酬
当方にご依頼いただく場合の報酬額は、所有権移転登記申請、関連する書類作成等の合計が5万円程度(消費税別)の場合が多いです。
(報酬については自由化されていますので、各司法書士により異なります。私の報酬基準。)
3.その他の実費
①登記事項証明書 1通あたり480円
②登記情報の確認費用 不動産1個につき1回 332円
4.関連する登記
財産分与による所有権移転登記に関連して別の登記申請(ご住所や氏名の変更登記、抵当権の変更登記)が必要な場合には、別途費用がかかります。
関連ページ:不動産登記の費用見積もりには何が必要ですか?
財産分与による所有権移転の登記のご依頼をいただく場合には、両当事者の方と面談をさせていただいております。
両当事者に同時に臨席いただけない場合には、個別に日程調整をさせていただいておりますので、ご安心ください。
ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
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川西合同事務所 司法書士田原一暁