執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
住宅ローンの返済が終わったときなど抵当権で担保されている債権を完済した場合には、抵当権抹消登記を管轄法務局に申請する必要があります。
抵当権抹消登記に必要な書類は、抵当権者(銀行や保証会社など)から受け取りますが、受け取った後に抵当権抹消登記を申請し忘れたり、そもそも抵当権抹消登記を申請しなければならないことをご存じ無い方もいらっしゃいます。抵当権抹消登記を申請をしない限り、返済を終えても抵当権は登記上残ったままになります。
抵当権抹消登記を申請せずに長期間ほうっておくと、
→その不動産を売却するときなどに抵当権の抹消登記がされていないことが発覚
→受け取ったはずの必要書類が見つからない
→住宅ローンを利用していた金融機関に問い合わせて書類を再発行してもらう(再発行できない書類もあります)・・・
などということになってしまいます。(時間と手間がかかります)
住宅ローンの返済が終わったときなど抵当権で担保されている債権を完済した場合には、速やかに抵当権抹消登記を申請することをお勧めします。
抵当権抹消登記に必要な書類は、抵当権者(銀行や保証会社など)から受け取ります。
抵当権抹消登記に必要な書類は、抵当権者により書式が異なりますが、概ね次のような書類です。
⑴ 抵当権解除証書(抵当権者により「弁済証書」「放棄証書」など書式が異なります)
⑵ 抵当権設定契約証書(抵当権解除証書を兼ねている場合があります。)
※ 抵当権設定契約証書に法務局の登記済みの朱判が押されていない場合(平成16年不動産登記法改正前に設定した抵当権)には、抵当権者の登記識別情報通知が別途必要です。
⑶ 抵当権者の委任状
⑷ 抵当権者の登記事項証明書
※ 抵当権者の登記事項証明書は、「会社法人等番号」を登記申請書に記載すれば添付を省略することが出来ますが、抵当権者の本店・商号・代表取締役等の代表者の資格氏名・会社法人等番号が分からないと申請書が作成できません。内容が確認できれば原本でなく写しでも良いので、必ず受け取りましょう。抵当権者の商号や本店が変更している場合がありますので、良く確認する必要があります。
⑸ 代理人が申請する場合には抵当権設定者の委任状(認印で可)
抵当権抹消登記を申請する際に注意すべき事項としては次のようなことがあります。
⑴ 登記されている住所と現在の住所が異なるとき
お引越しをしている等の事情のために、権利部甲区(所有権に関する事項を記録する部分)に登記されている住所と現在の住所(印鑑証明書や住民票に記載の住所)が異なる場合には、登記されている住所を現在の住所に変更する登記申請が必要です。
一度だけお引越しをしている場合には住民票を準備すれば事足りますが、市区町村をまたいで何回もお引越しされている場合には、住民票だけでは住所の変遷をすべて証明することが出来ません。
その場合には前住所地の住民票の除票(閉鎖された住民票のこと)、戸籍附票などを取り寄せる必要があります。
関連ページ:住所や氏名の変更登記
共有の不動産の場合には、他の共有者の住所の変更登記申請には委任状が必要です。
法務局に行ってから住民票や委任状が必要であることが発覚した場合には二度手間になりますので、事前に確認する方が良いと思います。
⑵ 不動産の所有者に相続が発生しているとき
不動産の所有者に相続が発生している場合には、抵当権抹消登記に先立って(同時も可)相続による所有者の名義変更登記が必要です。
関連ページ:相続による所有権移転登記
⑶ 抵当権抹消登記の必要書類が古いとき、抵当権抹消登記の必要書類を紛失しているとき
抵当権抹消登記を放置していると、受け取った書類が古くなってしまったり、書類を紛失してしまったりすることがあります。
①書類が古くなってしまった場合
書類が古くなってしまうと、抵当権者の委任状に記載された代表者が退任してしまっていたり、抵当権者の商号や本店が変更していたり、場合によっては合併や解散・清算などで会社自体が無くなってしまっていることがあります。
そうなると、抵当権者に連絡をして書類を差し替えてもらったり、合併後の存続会社に連絡をしたり、清算人を調べて連絡をしたりと手間と時間がかかります。
出来るだけそうならないように速やかに抵当権抹消登記を申請する方が良いのですが、そうなってしまっている場合には時間と手間をかけてでも申請せざるを得ません。
申請しないといつまでも抵当権の登記が残ってしまい、売却の際等に支障がでます。
②書類を紛失している場合
書類を紛失している場合には、抵当権者に連絡をして書類を再発行してもらう必要があります。
ただし、法務局の朱判が押されている抵当権設定契約証書(登記済証)や登記識別情報通知は再発行出来ません。
事前通知制度という制度を利用して抵当権抹消登記を申請します。
関連ページ:権利書、登記識別情報を紛失したのですが?
1.登録免許税
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産の個数1個につき1,000円です。
ただし、不動産の個数が20個を超える場合には2万円(最大2万円ということ)になります。
例えば、土地1筆、建物1棟の戸建て住宅の場合、登録免許税は2,000円となります。
マンションの場合には、専有部分の建物を1個、敷地権の目的たる土地の数を1個と数えます。
戸建住宅の場合にも、マンションの場合にも外観だけでは敷地の数が分からないことがあります。
また、進入路やゴミステーション(近隣の人と共有の場合も多い)にも抵当権が設定されていることがありますので、注意が必要です。
2.司法書士報酬
現在、司法書士報酬は自由化されており、各司法書士が独自に報酬基準を設けることになっています。
関連ページ:司法書士報酬の相場について
当方にご依頼いただいた場合の抵当権抹消登記の費用は、土地1筆、建物1棟の場合は、実費と報酬等含めて17,000円程度となります。
マンション(敷地権の目的たる土地の個数が1個)の場合は、実費と報酬等を含めて15,000円程度となります。
不動産の個数が多い場合、前提として登記名義人の方のご住所の変更登記が必要な場合、登記名義人の方が亡くなられている場合など、事案によって費用は変わります。
まずは事案の内容を確認させていただきますので、ご納得の上、ご依頼いただきますようお願い申し上げます。
なお、報酬基準はこちらをご参照ください。
抵当権抹消登記の申請には期限はありません。
ただし、いつでも良いからと先延ばしにしていると、いざというときに困ってしまうことがあります。
出来る限り速やかに申請することをお勧めします。
ご相談の方は、お気軽にご連絡ください。
お電話でお問い合わせの方は、072-740-3900 にお電話ください。(平日の9時から17時)
お問い合わせフォームでお問い合わせの方は、下記ボタンをクリックしてください。(お返事にお時間をいただく場合があります)
川西合同事務所 司法書士田原一暁