執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
会社設立の登記のご依頼をいただく場合、一番数が多いのは株式会社です。(合同会社の設立も最近増えてきています。)
株式会社設立の大まかな流れは、次のとおりです。
⑴定款の作成 → ⑵定款の認証 → ⑶定款に定めていない事項の決定 → ⑷出資の履行 → ⑸登記
会社の定款は、その株式会社の基本ルールとなります。必ず作成しなければなりません。
定款作成にあたり「ひな形」を利用することは悪いことではありません。定款に定めるべき事項の記載漏れを防ぐためです。ひな形を利用しつつ、設立しようとする株式会社に適合するように検討しながら定款を作成することをお勧めします。
定款作成にあたり決定する事項
⑴ 商号
関連ページ:株式会社の商号変更の登記
⑵ 本店(最低限市区町村までは定款に記載する必要があります)
関連ページ: 株式会社の本店移転の登記
⑶ 事業目的
関連ページ:株式会社の目的変更の登記
⑷ 公告をする方法(決算や会社の決定事項を対外的に告知する方法)
⑸ 株式の譲渡制限に関する規定
関連ページ:株式の譲渡制限に関する規定の登記
⑹ 発行可能株式総数
⑺ 株主総会や取締役会(設置は任意)の運営方法
⑻ 取締役、取締役会(設置は任意)、監査役(設置は任意)など会社の機関設計
関連ページ:株式会社の取締役会、監査役制度の廃止
⑼ 役員(取締役や監査役)の任期や選任・解任の方法
関連ページ:株式会社の役員変更登記
⑽ 決算期
⑾ 出資者の住所氏名・出資額・引き受けた株式の種類や株式数
⑿ 設立時の役員
株式会社の定款は公証人による認証を受ける必要があります。
定款が作成名義人である発起人の意思によって作成されたことを公証人により証明してもらいます。
参考リンク:日本公証人連合会のホームページ
定款認証における留意事項
⑴ 定款の認証は会社の本店の所在地を管轄する法務局に所属する公証人しかすることができない
兵庫県内に本店を置く会社の定款認証は神戸地方法務局所属の公証人しかすることが出来ません。
兵庫県川西市は大阪に隣接していますが、川西市に本店を置く会社の定款は、大阪法務局所属の公証人に認証してもらうことは出来ません。
⑵ 公証役場に事前に定款案をFAXやメールで送信して内容を確認してもらう
事前に法令に違反していないか等、定款の内容を事前確認してもらいます。
いきなり公証役場に行っても認証してもらえません。
⑶ 定款の認証には「書面の定款」と「電子定款」の2種類がある
電子定款の場合には収入印紙(4万円)が不要です。電子定款にすると株式会社設立の費用が4万円安くなります。
⑷ 定款認証の必要書類
① 定款認証の委任状(代理人による場合)・・・実印による押印が必要です。
② 発起人が個人の場合は、個人の印鑑証明書 1通
※ 発起人が複数の場合全員分 各1通
③ 発起人が法人の場合は、法人の登記事項証明書および法人の印鑑証明書 各1通
④ 実質的支配者の申告書
※ 定款の事前審査の段階で公証役場に提出することになっています。マネーロンダリングを防止する趣旨です。運転免許証、マイナンバーカード等の写しも併せて提出します。
※ 実質的支配者の申告書のひな形はこちら
⑤ 電子定款を受領するためのCD
⑸ 定款認証の手数料
52,000円程度。公証役場にて現金で支払います。
定款に定めていない事項がある場合には、発起人の決定などにより決定します。
よくある決定事項は次のような事項です。
⑴ 本店の具体的な場所
定款に定める本店所在地は「市区町村」までで良いので、発起人の過半数の決定により具体的所在場所を決定します。定款に具体的所在場所まで記載している場合には必要ありません。
※ 設立後の本店移転の可能性を考え、定款には本店所在場所を具体的に記載しない場合が多いです。
⑵ 設立時の取締役(設立時の監査役も同様の取り扱い)
定款に設立時の取締役を記載していない場合には、発起人の過半数の一致により取締役を決定します。定款に設立時取締役を具体的に記載している場合には必要ありません。
⑶ 設立時代表取締役
定款に設立時の代表取締役を記載していない場合には、①設立時取締役の過半数の決定(取締役会設置会社)②発起人の過半数の一致(取締役会非設置会社)により代表取締役を決定します。
定款に設立時代表取締役を具体的に記載している場合には必要ありません。
※ 設立時の役員は定款で定める方が簡便ですので、ほとんどの場合定款に具体的に定めています。
発起人は引き受けた株式の出資の履行をする必要があります。
金銭の出資の場合、定款を作成したのちに発起人代表者の個人の預金口座に入金する方法により行います。
ただ単に金○○円が入金されているだけではなく、入金が誰によるものかがわかるように(入金者の名前が通帳に載るように)しなければいけませんので、振り込みによる入金が望ましいです。
発起人による入金が完了した後に、通帳の表紙、中表紙、入金の記載のあるページのコピーに設立時代表取締役が払い込みが完了した旨の証明をして法務局に提出します。
入金の時期は、定款の作成後である必要があります。
設立手続きのすべてが終了した日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局に株式会社の設立登記申請をします。
定款認証、出資の履行の完了日のいずれか遅い方の日になることがほとんどです。
設立登記の申請の留意事項
⑴ 管轄法務局
管轄法務局は、法務局のホームページで調べます。
近年、商業登記の管轄法務局は集約されていますので注意が必要です。
兵庫県内の会社法人の登記は、全て神戸地方法務局の本局が管轄しています。
⑵ 会社成立の日
会社成立の日は、法務局への設立登記申請日となります。
設立に必要な手続きを全て完了していれば会社成立日(会社設立日)は選べます。(年末年始・土日祝日などの法務局閉庁日は不可)
⑶ 印鑑の届出
会社の代表者は法務局に印鑑の届出をしなければなりません。
会社設立の登記申請日までに法務局に届け出る会社の印鑑を作成する必要があります。
代表者が2名以上の会社は、その内の1名は必ず印鑑を届け出る必要があります。全員が届け出ることも可能ですが、同じ印鑑の使用は認められません。
届け出た印鑑は「会社の実印」となり、会社の印鑑証明書の印鑑となります。
会社設立後には印鑑カードの交付を受けます。印鑑カードの交付を受けなければ会社の印鑑証明書は取得できません。
⑷ 登録免許税
登録免許税は、資本金の額の1000分の7(0.7%)ですが、最低金額が15万円となります。
資本金が10,000,000円の場合 10,000,000 × 0.7% = 70,000円 ですが、最低150,000ですので、登録免許税額は150,000円となります。
資本金が1円でも150,000円となります。
⑴ 必ずかかる費用
①登録免許税 資本金の額の1000分の7(最低15万円)
②公証役場の定款認証手数料 約5万2,000円
③定款に貼付する収入印紙 4万円(電子定款認証の場合には不要です。)
④会社設立後の登記事項証明書や印鑑証明書の取得費用 数千円(取得する通数により異なります。)
⑵司法書士に依頼した場合の報酬
司法書士報酬は自由化されていますので、各事務所により違います。
私にご依頼いただいた場合には、定款の案分作成から設立登記完了、登記事項証明書の取得まで全て含めて10万円です。
関連ページ:報酬基準
当方に資本金1000万円の株式会社の設立登記をご依頼いただいた場合、必ずかかる費用と報酬の合計額が約30万円(少しだけ超えます)となります。
私に株式会社の設立登記のご依頼をいただいた場合には、次のような作業を行います。
⑴ どのような会社を設立したいのかをヒアリング
⑵ 定款その他必要書類の作成
⑶ 会社設立の日程を調整(出資の履行のタイミング、設立日の選択)
⑷ 定款認証の代理(電子定款認証を行いますので収入印紙4万円不要)
⑸ 設立登記申請
⑹ 印鑑カードの交付を代理
⑺ 登記事項証明書や印鑑証明書の取得
会社の設立を必要事項を入力するだけで簡単にできるかのような記載がされているサイトもありますが、色々な検討事項がありますので、本当にそれで良いのか?設立は出来るかもしれないが意図していた会社を本当に設立できるのか?と感じます。
また、設立登記手続きに不備があった場合にどのように対応するのか?の問題もあります。
そのようなサイトを利用したことが有りませんので何とも言えませんが、会社設立の事務作業量を考えるとそんなに簡単なことはないと考えています。
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