執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
比較的小規模な同族会社の場合などには、会社の運営は限られた人がイニシアチブを握っていることが多いのが実情です。
株式は譲渡人と譲受人の合意により自由に譲渡することが出来るのが原則ですが、前述のような会社の場合、人的な関係が薄い人物などが株式を取得し、議決権を持つことにより会社の経営に影響を与える可能性があります。
そのような事態を防ぐために「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役会の承認を要する」などと、株式の譲渡に制限を設ける定款の定めを置くことが出来ることになっています。
株式の譲渡制限に関する規定は登記事項となっていますので、新たに設定した場合、変更した場合、廃止した場合には、その旨の登記申請をする必要があります。
1.新たに設定する場合
株主総会を開催し、株式の譲渡制限に関する規定を設定する旨の決議(特別決議)を行います。
株主の株式譲渡の自由を制限することになりますので、株券を発行している会社は効力発生の1か月前までに株券提供公告を行うことが必要です。
また、各株主、登録質権者に対する個別の通知をする必要もあります。
2.変更する場合
株主総会を開催し、株式の譲渡制限に関する規定を変更する旨の決議(特別決議)を行います。
取締役会を廃止する際に「当会社の株式を譲渡により取得するには取締役会の承認を要する」との規定を「当会社の株式を譲渡により取得するには株主総会の承認を要する」と変更したりします。
3.廃止する場合
株主総会を開催し、株式の譲渡制限に関する規定を廃止する旨の決議(特別決議)を行います。
会社の規模が大きくなり株式を上場する際には株式の譲渡制限に関する規定を廃止する必要があります。
発行しているすべての株式につき株式の譲渡制限に関する規定を設けている会社を非公開会社といいます。
非公開会社にだけ認められていることがあり、多くの小規模な株式会社にとってはメリットとなります。
非公開会社にだけ認められていることには次のようなものがあります。
1.役員の任期を最長10年に伸長できる
株式会社の役員の任期は、取締役が2年、監査役が4年が原則ですが、非公開会社では取締役、監査役とも任期を最長10年まで伸長出来ます。
2.取締役会を設置しなくてもよい
非公開会社においては、取締役会の設置は任意です。取締役会を設置するためには、取締役が最低3名必要ですが、適任者が3名いない場合には困ってしまします。
また、取締役会を設置すると監査役も必ず置かなければいけません。
非公開会社は、取締役が最低1名いれば良いことになります。(もちろん複数の取締役がいても監査役を置いても構いません)
関連ページ:株式会社の取締役会、監査役制度の廃止
関連ページ:株式会社の役員が足りなくなったのですが?
3.相続人に対する株式の売渡請求
非公開会社の株主に相続が発生した場合に、一定の要件のもと相続人に対して株式を売り渡すことを請求することが出来ます。
非公開会社であることに加え、定款に相続人に対する売渡請求ができる旨の規定があることが必要です。
1.登記申請に必要な書類
⑴株式の譲渡制限に関する規定を設定、変更、廃止する決議をした株主総会議事録
⑵株主リスト
※ 株主総会の決議に基づき登記申請をする場合には「株主リスト」が必要です。株主リストについては法務省のホームページをご参照ください。
⑶株券提供公告をしたことを証する書面 又は 株主名簿など(株券発行会社が規定を設定する場合)
※ 株券発行会社かつ実際に株券を発行している会社は、株券提供公告をしたことを証する書面を添付
※ 株券発行会社だが実際には株券を全く発行していない会社は、全株式につき株券不発行であることが記載された株主名簿などを添付
2.登録免許税 3万円
株式の譲渡制限に関する規定を設定することにより、好まざる人物が会社の経営に関与することを防ぐことができます。親族のみで経営している会社にはこのようなニーズがあることは当然といえば当然です。株主に将来相続が発生した場合に、株式の売渡請求ができるか否かは大きな違いになるかもしれません。
株式の譲渡制限に関する規定を設定する、変更する(廃止するはご依頼いただいたことがありません)登記は、取締役会、監査役制度を廃止する際に併せてご依頼いただくことが多いです。
会社経営の実態に合わせてシンプルな会社に変更していくのも良いかもしれません。
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