執筆者 川西合同事務所 司法書士田原一暁
亡くなった方が遺言書をのこしており、遺言には自分が不動産を相続すると書かれていた。
遺産分割協議が整い、自分が不動産を単独で相続することになった。
このような場合にも、相続登記は早めに申請することをお勧めします。
遺言書がある場合には、他の相続人の協力を得ることなく相続による所有権移転登記を申請することが出来ます。
必要書類は、次のとおりです。
1.遺言書
2.被相続人の住民票除票、戸籍附票、登記済証など、登記名義人と被相続人の同一性を証する書面
3.被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍の場合もある)謄本
4.相続人の戸籍謄抄本(謄本でも抄本でも可)
5.相続人の住民票
6.不動産の固定資産税評価証明書または固定資産税の課税明細書
他の相続人の戸籍や住民票や印鑑証明書なども必要なく、印鑑を押してもらう書類もありません。
たとえ遺言書があったとしても法務局には遺言書の存在は知られていません。
また、遺産分割協議によりある相続人が単独でその不動産を相続することになったとしても、それは当事者以外の人の知るところではありません。
遺言書や遺産分割協議においてその不動産を相続しないこととなった相続人でも、法定相続分による相続登記の申請が可能です。
法定相続分どおり持分割合での相続登記は、相続人の内の一部からの申請で可能(保存行為)とされているからです。
結果、法定相続分による相続登記は受理され、不備がなければ、法定相続分どおりの持分割合に登記がされます。
遺言書の内容に納得がいかない、あるいは遺言書がそもそも無効であると主張する相続人は、この相続登記申請を選択することが可能です。
前述の法定相続分どおりの相続登記の効果ですが、
1.遺言書が無効である場合
有効にされた登記であり、その後、遺産分割協議が整った場合には、遺産分割を登記原因とする持分移転登記を申請することになります。
2.遺言書が有効であった場合
遺言書により取得することとなっていた相続人の持分については登記が有効であるため、所有権更正登記を申請することになります。
所有権更正登記に協力が得られない場合には、持分移転登記を求める訴訟が必要になります。
3.遺産分割協議で決定された内容と相違している
遺産分割協議においてその不動産を取得することとなっていた相続人の持分については登記が有効であるため、所有権更正登記を申請することになります。所有権更正登記に協力が得られない場合には、持分移転登記を求める訴訟が必要になります。
法定相続分による相続登記がなされた後に、第三者が関係してきた場合にはどうなるのでしょうか?
第三者とは、法定相続人の持分を譲り受けてその旨の登記をした人、法定相続人の持分に抵当権設定登記をした人、法定相続人の持分を差し押さえた相続人の債権者などが該当します。
2018年の民法改正により、次の条文が新設されました。
つまり、遺産分割協議により当該不動産を単独で相続することとなった相続人、遺言により当該不動産を単独で相続することとなった相続人は、登記を先にしていなければ、第三者に対して自分の法定相続分を超える部分については対抗することができません。
自分が単独で相続することとなっていた相続人も、第三者に対しては登記なくして法定相続分を超える部分に関しては所有権を対抗することができません。
自分の法定相続分については対抗できるとしても、他の相続人が全く知らない第三者に持分を譲渡してしまった場合には、その悪意を証明できない限りは対抗することが出来ません。
遺産分割協議や遺言書が無い場合でしたが、法定相続分どおりに相続登記をして第三者に持分を譲渡してしまった事例を、私は経験しています。
そのような事態を避けるためには、出来るだけ早めに相続登記を申請してしまう他ありません。
遺言書が自筆証書遺言の場合には、遺言書の検認手続きを経なければ相続登記を申請することは出来ません。
遺言書の検認手続きには、法定相続人すべてを明らかにする戸籍謄抄本が必要であり、戸籍の取得にはある程度の時間が必要です。
また、遺言書の検認申立書を家庭裁判所に提出しても、検認の期日までには日数を要します。
いずれにしても早めに手続きに着手することをお勧めいたします。
ご心配な方は、お早めに弁護士や司法書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
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川西合同事務所 司法書士田原一暁